思考の社会学 ~心理学革命~

人それぞれ、様々な個性的思考のもと、論議し生活している。我々は人々に影響を与え、影響を受け、時代が変わってきた。 そんな様々な思考が交錯することで生じる時代変化など、心理学的にまた社会学的に考察する。

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カフカ『城』 ~中央集権の非公開確保~




『変身』や『審判』は、日常生活を繰り返して来た中で、いきなり訳も分からない正義(もしくは周辺常識)の発信によって睨まれるようになった状況から、物語が始まっている。その点『城』は余所者として扱われるところは似ているのだが、ただし予め自らがその地を選んで入り込んだ点で、『変身』や『審判』の突発的に生じた日常生活との離反とは異なった雰囲気にあります。

そもそも『城』1922 は第一次世界大戦の後の作品であって、大戦終戦前の『変身』1912『審判』1914 の頃と状況は異なっていた。おおよそ第一次大戦の終結直後は、しばらくは戦争を起こさない起こせない前提のもとで停戦産業化の雰囲気に包まていたように思われますが、同時に民族自決による国家独立も進んでいた時期であり、まだ国家内の民族問題は主題になりえなかったことでしょう。(民族問題は第二次大戦へ向かうに従い、主題化されて行ったと見なす)

つまり城が象徴していた一つは国家の中枢だったのであり、土着民族の方が互いに共同体を理解しやすい立場だったために有利だったとも考えられます。もはや『創世記』(第39章から第41章)のヨセフのような他国エジプトでスンナリ君臨する物語とは大きく異なったカフカの『城』であって、自らを支えるために四苦八苦する城(『創世記』で言えばエジプト中枢)の一人調査隊なのである。またカフカはシオニスト会議にも顔を出したことがあったようですが、『出エジプト記』のように簡単には仲間と共に新たな律法に基づいた移転先を開拓できる時代ではなかった点で、エジプトで定住するための四苦八苦物語に近い内容に値します。



ところでフランスのカミュがカフカについて語るには、『審判』は診断し『城』は治療法を描いたと記したわけですが、そうしたカミュの不条理を基準とした判断には疑問があります。カフカの小説は決して『不条理に囲まれた個人』という実存主義が主題ではありません。すでにカフカは法学博士の学位を授与されていたことから、法学知識を有した上で『審判』を執筆していますから、むしろ様々な『不条理に囲まれた個人』が集まった社会状況を想定していたと考えられます。




知識流通の図を用いて説明しますと、『城』は中枢の黒円に相当し、主人公の『K』は準位が低い周辺部の緑円から参入したことになります。もちろん中枢の黒円には一つの赤円が接しているわけではなく、色んな分野に分かれて複数の赤円が接しているわけです。

カフカの『城』は緑円から入り込んで中枢の黒円へ近づいて行こうとする主人公Kの四苦八苦物語なのですが、物語に直接投影したかどうかは別問題としてカフカが抱いていた社会観としては、黒円の中で何らかの知識が流通することを想定していたと思われます。実際のところ『審判』にしても、単に不条理に包まれた個人だけが問題ではなくして、もっと周辺の名も知らぬあらゆる人物たちの間でも絶え間なく知識を流通し続けている現実を想定した上で、時に一個人の身の上に起き得るだろう一例を小説として示したものと、カフカ自身に法学の知識があったことも合わせると考えざるおえないでしょう。

おそらく『審判』の第九章の『掟の前の門番』とは、知識流通の図で言う緑、青、赤、黒へと次第に高い準位の知識流通の場へ向かう一つの例に相当すると考えられ、それは『城』の第十五章においても類似したイメージが読み取れそうな感じもします。たとえば城の中に従事するバルナバスにとって幾重にも置かれた柵が感じられるものと描かれており、またオルガとKの会話においては、何か沈黙と傍観を通そうとしたアマーリアに『掟の前の門番』にたいする立ち止まりが暗示されている感じがします。



このように考えてみますと、どうも戦後フランスにおけるカミュとサルトルにおける『反抗か?革命か?』の議論は、カフカの小説を実存主義の観点に限定にした上の社会活動の問題であり、小説家カフカの社会観が捉えられていなかった感じがします。そしてフランスで構造主義が台頭した事情も、そんなカフカとカミュやサルトルの社会観の相違が影響したものと考えられます。


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  1. 2013/07/01(月) 20:52:45|
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