思考の社会学 ~心理学革命~

人それぞれ、様々な個性的思考のもと、論議し生活している。我々は人々に影響を与え、影響を受け、時代が変わってきた。 そんな様々な思考が交錯することで生じる時代変化など、心理学的にまた社会学的に考察する。

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My Little Lover ~時空間の響き~

My Little Lover は、日本のポピュラー音楽界に、西欧の時空間を響き渡らせ始めた。それは何か教会理念に包まれていたところからルネサンスの遠近法が生じたようなもので、時代的な日本の風景を基準とすることからは離れている。たとえれば、パスカルの "宇宙内のもの思う葦" に近づけたような時空間である。

その発生状況を簡単に確認しておくならば、それはリバイバルとなる森田童子の「僕たちの失敗」93やドラマ「家なき子」の主題歌「空と君の間には」94などで、"社会状況に翻弄される個人"が意識されるようになったこと、また Mr.Children の「innocent world」の歌詞 "mr,myself" により自身を他者と扱うと同時に世界内不特定他者と同等と見なす意識が生じたことによる結果と思われる。

そうした状況の中、My Little Loverは翌95年、デビュー作「Man & Woman」から「白いカイト」、「Hello Again ~昔からある場所」とリリースした。そしてこれに「Destiny」98を加えた四曲に、強く西欧的な幾何学的時空間の表出が認められるのである。

マイリトの「Man & Woman」と比べるならば、小田和正の「ラブストーリーは突然に」91、広瀬香美の「ロマンスの神様」93、trfの「BOY MEETS GIRL」94は、自然的時空間のまま、「世界中の誰よりきっと」92のような新しい世界的広がりを持たせた出会いである。しかし「Man & Woman」の場合には、誰かが誰かと会い恋に落ちる現象を語ることで新たな空間を示すのである。つまり自然的な空間の広がりによる出会いの可能性ではなく、数々の出会いがある新たな空間の広がりなのである。

一般的に音楽とは、人々の気持ちや心情などが表現されていると考えられている訳だが、その気持ちや心情を持つ人物だけではなく、無生物に関する領域が入り込むこともある。たとえば故郷の山や川、あるいは海や雪などが用いられる場合である。しかしそうした場合も、たいていそれらを見ている人物が設定されているのであって、気持ちや心情が入り込んでいると言えよう。要するに「Man & Woman」で新たな空間を示していることには、その新たな空間を見ている心情が表されているのである。従来の自然的空間では、「別に普段目にする人々の他にも色んな人々がいるよね」と言った感じなのだが、「Man & Woman」は、「私の経験する出会いとは、色々な出会いがある内の一つなんだよね」の雰囲気が漂うのである。

たとえば "全然報われないのは あなただけじゃないから わたしだけじゃないから" の歌詞の場合、ただ "あなただけじゃないから" のみであるならば世話焼きアドバイスソングになってしまうところだが、すぐさま "わたしだけじゃないから" と続き、しかも同じ抑揚で歌われている点でナレーション的な効果もある。それは同じ空間内にいる "あなた"と "わたし" の同等性を感じることの視座を示しているかのようである。

「白いカイト」となれば、その新たな時空間の響きはよりわかりやくなる。あの曲調に "世界は私だけ置いて回り続ける" の歌詞がのせられているのは、きっと他の意味合いを忍ばせる効果があるのだろう。実際のところ、「白いカイト」の曲調に、世界から取り残された心情を感じるだろうか? それとも前向きさせる応援ソングのため、そう感じさせないのだろうか? 確かに自分だけが取り残された心情を表しているかも知れないが、しかし世界が回っていることについては、よく知っている躍動感があるのであり、空間と時間の広がりを見る意志を含んだ歌詞と言える。

「Hello Again ~昔からある場所」の "新しい扉を開け海に出れば 波の彼方に果てを感じられる" は新しい時空間を象徴し、過去の自然的な時空間については "記憶の中" 、つまり過去の自然的時空間で見ていたことの記憶として位置づけられたものと捉えられる。

95年の三曲から三年後の「Destiny」となると、もう新たな時空間の積極的放射ではない。すでに受け取られる人々には受け取られ、受け取られない人々には受け取られない、そうした時代的な恒常化された日本の状況を実感した時期であったため、積極的な時空間の放射ではないのである。むしろそうした95年に始めた時空間の恒常化された状況からの決別を示した曲と言った方がよい。 "今がここで回りだす"とは、新たな未来の時空間を積極的に描こうとしたものではない。すでに未来の時空間を共有された上での、新たな動きと決別である。 "あなたをもっと感じたらずっと知っていたのに" と現在までの無知状態から未来への穴埋め願望により "きっと逢える運命の時に"が描かれる。95年に構築された新たな時空間のもと、無知の恒常化あるいは知識形態の恒常化が実感された上で、現在から未来への方向性を描いたのである。

こうしたMy Little Loverの自然的な時空間からの離脱傾向と同系列にあったのは、スピッツであろう。95年「ロビンソン」、「涙がキラリ☆」、96年リバイバル「空も飛べるはず」、「チェリー」が代表曲である。彼らの曲には自然的風景はない。それは自然的風景に映らない者の記憶や回想、つまり "もの思う葦"の強調であり、サウンド(特にサビ)で新たな時空間を描く形にある。ブルーハーツが自然的風景に映らない側の自然的風景への問題提議の投射であったならば、スピッツはその自然的風景にたいして新たな時空間を投射させたと言えよう。自然的風景と対極にある点ではブルーハーツとスピッツは同士である。

そのMy Little Loverとスピッツが台頭し始めた95年を振り返れば、岡本真夜の「TOMORROW」も登場している。彼らに共通しているのは日常的風景に向ける笑顔を必要性としないことである。むしろ日常的風景において脅迫的な笑顔が要求されることにたいする、新しい時空間からの提供であったと言える。

同じ頃には93年のダンス形式にあったtrfから97年安室奈美恵の「CAN YOU CELEBRETE ?」までの、特に女性ヴォーカルを主体とした小室サウンドがあったが、それは新しい自然的風景を目指したもので、新しい時空間を目指したものは、華原朋美の「Hate tell a lie」くらいの感じだ。一体、自然的風景と新しい時空間とは何が異なるのか?

それは自然的風景に映らないものの態度にある。新しい時空間の場合は、ヴォーカルが新しい時空間を背負った形なのだが、小室サウンドでは流れる風景の中で自分の立ち位置を保とうとする緊張感であり、自然的時空間の中で響き渡らせることにある。「ちびまる子ちゃん」でたとえるならば、自然的風景の中でくらす登場人物と新たな時空間からのナレーションの違いである。小室ファミリーはちびまる子ちゃんの新たな自己立場を求め、My Little Loverやスピッツの場合はナレーション的な時空間を背負った形である。

Mr.Childrenについては双方の立場が入れ乱れている。「CROSS ROAD」や「シーソーゲーム」を含めでもよい感じはするが、新たな時空間を発した傑作は「innocent world」「名もなき詩」のみである。「Tomorrow Never Knows」や「es」は生き方の理念教示が強く新たな自然的風景の自己を示した傾向であって該当はせず、「花」以降の作品も保守的自然的風景の中でのテーマ拡張と言った形である。

傑作二曲の名文句は、 "mr.myself" と "知らぬ間に築いてた自分らしさの檻" である。新たな【自分自身】についての見方を示すこととは、それは同時に自然的風景についての対極に位置することを意味するのであり、様々な情景の列記自体が新たな時空間からの視座となるのである。



一体ここで何を言いたかったかと言えば、心理学や社会学に音楽が足りないと言うことである。これからの心理学や社会学を目指す日本人には、次の曲の立ち位置について何度も想像してもらいたいものである。

井上陽水 「傘がない」 「東へ西へ」 「氷の世界」 「最後のニュース」

伊勢正三 「ささやかなこの人生」

渡辺真知子 「迷い道」 「かもめが翔んだ日」

久保田早紀 「異邦人」

Mr.Children 「innocent world」 「名もなき詩」

My Little Lover 「Man & Woman」 「白いカイト」 「Hello Again ~昔からある場所」 「Destiny」

海岸通



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  1. 2010/10/07(木) 09:43:56|
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