思考の社会学 ~心理学革命~

人それぞれ、様々な個性的思考のもと、論議し生活している。我々は人々に影響を与え、影響を受け、時代が変わってきた。 そんな様々な思考が交錯することで生じる時代変化など、心理学的にまた社会学的に考察する。

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キャンディーズ論 ~70年代の社会観~

【美しき伝説】 (ナレーション)

青春とは 出発の朝
そして 終わりなき旅

青春とは 涙の歴史
そして 美しき伝説



卒業 (作詞 ちあき哲也)

そして あなたとは
長すぎた お友達

恋の機会 素通りして
臆病 だったのね

卒業式を 境に
二人 離れ離れ

今頃 不自然
好きと 言い出せば

軽く 憧れに
とどめたら こんなこと

私 ひとり めくり 終えた
心の カレンダー



【めざめれば、秋】 (ナレーション)

春の嵐は残酷だ
まして
真昼に吹く風は…

夏の暗さは地獄色
乙女心を迷わせる

恋の闇夜に鳴く鴉
だから夜明けを人は待つ

その朝は――

バイオレンス メロドラマ
めざめれば、秋



悲しきためいき (作詞 山上路夫)

夜汽車の窓 私は 額をつけて
あなたの街 見つめて ため息つくの

ここで めぐりあい
愛し合い 生きたのよ
美しい ひとときを
二人は

灯りが 涙にゆれてる
すべては 想い出になるの

忘れないでしょ けして
いつまでも この街で
愛し合い 生きたことを

・・・・・・・・・・・・・



これは 76.10 ~ 78.3 までのテレビバラエティー番組 「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」 内のキャンディーズが主役をつとめた短編スポ根ドラマ、「美しき伝説」 と 「めざめれば、秋」 の主題歌とナレーションである。第一弾はバレーボールで、第二弾は柔道であった。

そのナレーションの内容を確かめてもらえば、ひょっとしたら現在から見て何だかよくわからない苦境を妙に自ら壮大化した表現のようで笑えるかも知れないが、しかし当番組の他の 「悪ガキ一家の鬼かあちゃん」 などのコーナーではパロディなどお笑い系で占められていたのに比べて、「美しき伝説」 と 「めざめれば、秋」 では、わざわざお笑いの要素が排除された形であったのである。

キャンディーズが解散した後の80年代に入ると時代的な雰囲気も急激に変わってゆき、お笑いを意図した訳でもなかった 「スチュワーデス物語」83 の松本千秋役の演技の臭さ(大根役者)が評判を呼び、視聴率が上がる現象までになった。70年代の悪ガキ一家で活躍していたキャンディーズの頃は、笑いを意識した意図的な臭い演技の領域がありながら、しかも笑いを排した壮大化の短編ドラマの領域も分離されつつ進行していたのであるが、「スチュワーデス物語」 となると、笑いなしの壮大化ドラマを目指したのに、意図しない臭い演技が注目されてしまったのであって、言わばキャンディーズが分離していた"お笑い"と"壮大化ドラマ"の区分意識が崩れ落ちた時代へ突入していたのである。

お笑いに満たされた、かあちゃん役の伊東四朗に楽しく絡むキャンディーズの三人のコーナー 「悪ガキ一家の鬼かあちゃん」 では、つまはじかれ役の小松政夫に 「しらけ鳥音頭」 の出番がちゃんと用意されていた。つまり明るい内輪トークにたいして、その内輪トークの白々しいさや臭い演技を暗く見透かす眼差しも同時に合わさった、社会的舞台の明暗双方が示唆された競演にあった。そして他方の笑いが排された短編ドラマ 「美しき伝説」 と 「めざめれば、秋」 では、明るい社会舞台にたいして影となっている側の、人ひとりひとりの個人的領域についての共有意識が求められた形であったと考えられる。

「悪ガキ一家の鬼かあちゃん」 とは、新たな個人が工夫をこらす社会参加形態とも言える 「ナンチャッテ」78 や 「ぶりっ子」81 の社会的構造をいち早く示唆したものであった。キャンディーズはその社会的構造をみんなに等しく公開しようとしたお笑いを行ったのだが、しかし80年代からは、その社会的構造についての知識も一部の長けた少数芸人たちを中心とするテレビ演出集団の利権確保のために非公開のまま囲い込まれるようになったのだ。また 「デンセンマンの電線音頭」77 はキャンディーズと共に、猟師に狙われることの警告を【共有化】しようとするものであったが、80年代からのエリート意識的な芸人は警告の共有化を試みるのではなく、そっと警告を【囲い込み】ながら、自己人脈の秘境的進出へと役立てて行ったのである。

なるほど、キャンディーズとは猟師の狙いすましを人々へ警告するグループであったが、80年代のエリート化芸人たちとなると、伝統的猟師を敬遠させ、かつ警告が浸透しないように注意しながら自らの猟師化を進めていった訳である。全く 「悪ガキ一家の鬼かあちゃん」 では【臭い演技笑い】と【舞台明暗の笑い】が融合されていた訳だが、80年代に入ると【臭い演技笑い】を扱う 「おれたちひょうきん族」81 の勢力と、【舞台明暗の笑い】を扱う欽ちゃんと見栄晴やわらべ三姉妹(82)の勢力とに大きく分裂した時代に突入したと言える。(見栄晴が明るい舞台から外れた小松政夫の立場に相当する) そして伊東四朗と欽ちゃん、キャンディーズとわらべ、小松政夫と見栄晴を対応させて考えて見れば、70年代から80年代への時代変化の一側面が伺えるだろう。

いずれにせよ、意図的な臭い演技による笑いとは、一種の猟師に狙われていることについての警告であった。「スチュワーデス物語」 が意図と反したお笑い系の要素を含んで人気となってしまったのは、「悪ガキ一家の鬼かあちゃん」 のような社会的警告ではなく、苦境心情の共感が制作目的であったからである。またキャンディーズの三人の場合は普段からの活動よって密接な連携が可能だったのに比べて、「スチュワーデス物語」 の場合はドラマ限定の役配分であって、演出指導に従う個人個人のため普段の連携までの広がりはなかった。キャンディーズの連携プレーに気付きながらも知らない素振りを行う母ちゃん役の伊東四朗に現実社会と舞台演技の二重性が感じられるが、教官役の風間杜夫には台本に集中した熱狂のため派生的に生じる現実社会とのズレに過ぎない。



そもそもキャンディーズのデビューした頃の状況とは、「8時だヨ!全員集合」 のようなちびっ子向けのお笑いコントの後で舞台が回転して歌へと変わる、笑いと歌が混在していた時代であった。歌手として質問を受ける 「ザ・ベストテン」 が始まった1978年1月の時点では、すでに引退宣言をしていたキャンディーズであったため、歌手としての三人組と限定される時代風潮に飲み込まれることなく、そのまま同年4月に幕を閉じることが出来た感じもしないではない。 「普通の女の子に戻りたい」77 に認められるように、キャンディーズは [普通・芸能] の区別が主であって、[歌・お笑い] の区別よりも優先されていたと言えよう。実際、キャンディーズのお笑いとは、一般社会とテレビ舞台の境をよくわきまえ、それを主題とした結果であったと思われる。「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」 で示した伊藤蘭を中心としたお笑いとは、「なんちゃって」78 的なチャッカリ勢力に対抗するための社会意識が表れたものであり、ピンクレディーの場合は阿久悠の作詞を中心とした歌や踊りによってチャッカリ勢力にたいする警戒対抗策を示した形であった。



キャンディーズは70年代を駆け抜け、80年代からは時代も大きく変わった。「卒業」 の歌詞を見れば、告白できなかったことは過ぎ去った歴史として記憶されていたが、80年代には石川ひとみの 「まちぶせ」81 、あみんの 「待つわ」82 と今後の可能性を望んでいる。また第二弾の一緒になった後の別れである 「悲しきためいき」 にしても、その一緒にいたことが過ぎ去った歴史として記憶されていることから、告白しようがしまいが、別れようが別れまいが、起きたことを起きたこととして歴史を記憶することが、キャンディーズの青春短編ドラマのテーマにあったと言えそうである。

しかし80年代以降の漫才ブームからは、次第に語ることの社会的効果が重要視されるようになり、語らないことの歴史的記憶は弱体化していくようになったのだ。告白をした時の成功と失敗の話題性が大事になり、その話題のために告白していくようにもなって行った。時代がトーク番組の台頭へ移って行ったことは、その象徴である。そして80年代以降からは、つまはじき役は茶化すことで内輪トークを団結させる道具のように扱われ、それぞれの番組がタコツボ的に内輪トーク人脈を広げて行くことになったと言える。比べること、キャンディーズの場合はおどけにマキャベリズムを持ち込んだことはなく、人々へ世の中の狙いすましたマキャベリズムへの対抗策を発していた。


おそらくキャンディーズ三人の絆とは、ただ青春時代を共に楽しく過ごしただけの結果ではなく、三人で意見交換しながら社会を観察してきた結果であろう。それはランの意志を持った種まきが先頭を切り、新たな時代の社会的反応を三人で確かめているかのようだった。ただ観客に見られるためだけの団結ではなく、社会を見るための団結があったために、解散後のつながりを保ってた三人だったと信じたい。



それぞれの道から見える風景、一つは幕を閉じました。



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  1. 2011/04/25(月) 21:42:13|
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